宅建試験を終えて、無性に本が読みたくなりました

「その朝お前は何を見たか」 笹沢佐保

 

 背表紙のタイトルに惹かれ、裏表紙のあらすじを見る。

 

 「なぜパイロットをやめたのか」「どうやって妻を見つけだしたのか」「本当に誘拐事件をおこしたのか。そんなことをする妻だったのか」知りたくて居てもたってもいられなくなり、読み始める。

 夫がジェット機パイロットを辞めた。華やかでステータスも高い職業、自慢の夫だったのだろう。専業主婦にとって、夫と子どものできが、自分の価値だったころの話かもしれない。そうだとすると妻の落胆はとても大きかっただろう。子どもにむかって「いくじなしで、ダメなお父さん」と言っている。ダメな夫と一緒にいる妻は、子どもをおいてでもこの場から逃げたいと思ったのではないか。普通の主婦だったら、すがってでもついていくだろうが、彼女には美しさがあった。上昇志向が高い女性だったのだろう、このままでは終われないという勢いが伝わってくる。人生の変身をしたかったのだと思う。

  彼女は、自ら誘拐事件をおこしたわけでもなかったわけで、残酷な悪女でもなかった。ただ女として自由奔放に正直に生きていきたかったのかもしれない。

 文庫本に著者の紹介が、なかったので、この本を手にしたときには、いつごろの時代かわからなかった。文中にディスコ、公衆電話、電話帳とあるので、なんとなく昭和の終わりころかなと感じた。蒸発した彼女も私と同世代だったのかな。後で著者をネットで検索し、とても有名な作家さんだったことを知るのだが。

 

「お前は何を見たか」

彼女のような生き方に惹かれる自分がいる。美しく、行動力があったなら・・・。