遠足と母と愛と悲しさと

向田邦子さんのエッセイに”ゆでたまご”があります。

クラスに、I (アイ)という名前の片足の悪い、みんなに疎んじられている子がいて、小学校の遠足の日、その子の母が、古新聞に包んだ大量のゆでたまごを持ってきて、向田さんに渡すのです。ポカポカとあたたかい持ち重りのする風呂敷包み、校門のところで見送る父兄たちから、一人離れていつまでも見送っている母親の姿。愛という字を見ているとこのことを思いだす。

 

母親の精一杯の愛を感じます。

 

私には年子の妹がいます。遠足の帰りが遅い時間だと、親が学校まで迎えにくることがありました。

当時通っていた小学校は山の方にあり、夕方はとても暗く、人どおりも少なくなります。遠足の帰り、母の姿をみつけ、笑顔で近づいていくと、「おめをむかえにきたわけでね」と言うのです。妹をむかえにきたのだと言われ、とてもがっかりした思い出があります。

 

                               

みなとみらい散歩

仕事が休みの日はよく、みなとみらいを散歩します。

横浜中央卸売市場を通って、臨港パークランドマークタワーをのぞいて、帰路につきます。

 

年末か年始でしたが、散歩中横断歩道で信号待ちをしていましたら、後ろで二人の男性の声がします。

 

男性独特の低い声で、

「泣けたぁ。号泣したぁ」と言うのです。

 

とっさに「ラーゲリより愛を込めて」は予告どおり泣けるのかと。

 

「でも、声優がね」。

 

声優❔

 

続きを聞くと「ドラえもん」のことでした・・・。

 

私も、何かを見てか読んで、涙が止まらない経験を何度もしています。

そのひとつが、向田邦子さんのエッセイ「字のない葉書」です。

 

終戦の年の話が最後にでてきます。

疎開から帰ってくる、妹。

父親が、裸足でおもてへ飛びだし、声を上げ泣いた。

向田さんは、こう書きます、「私の父が、大人の男が声を立て泣くのを初めてみた。」と。

 

何度も何度も読んで涙がでます、涙が止まりません。

ぜひ、みなさん読んでみてください。