遠足と母と愛と悲しさと

向田邦子さんのエッセイに”ゆでたまご”があります。

クラスに、I (アイ)という名前の片足の悪い、みんなに疎んじられている子がいて、小学校の遠足の日、その子の母が、古新聞に包んだ大量のゆでたまごを持ってきて、向田さんに渡すのです。ポカポカとあたたかい持ち重りのする風呂敷包み、校門のところで見送る父兄たちから、一人離れていつまでも見送っている母親の姿。愛という字を見ているとこのことを思いだす。

 

母親の精一杯の愛を感じます。

 

私には年子の妹がいます。遠足の帰りが遅い時間だと、親が学校まで迎えにくることがありました。

当時通っていた小学校は山の方にあり、夕方はとても暗く、人どおりも少なくなります。遠足の帰り、母の姿をみつけ、笑顔で近づいていくと、「おめをむかえにきたわけでね」と言うのです。妹をむかえにきたのだと言われ、とてもがっかりした思い出があります。